桜の花も咲き始めたあくる日。
白銀雪の平凡な日常を大きく揺るがす事件は、妹の何気ない一言で始まった。

「ユキって……本当に男だよね?」
普段、無表情で整った顔立ちを珍しく歪めて、妹の真白は小首を傾げている。
「はぁ??」
いったいどういった状況なんだ!と、必死に寝起きで回らない脳みそをフル回転しながら、しっかりパジャマのズボンを握り締めた。
「だってユキより可愛い女の子って見た事ないし、身長も小さいし、肌ツルツルだし、年頃のくせに………髭もはえてこない」
「おぃおぃおぃ。つか、一緒に生まれてきて17年。俺が男だってのはお前が一番知ってんだろ〜が!」
「そうなんだけど……」
「つか、手を離せ真白!!お前、俺のパンツを下げる気か!」
なぜかがっしり掴まれたパジャマのズボンを必死に握り締めながら妹の真白を睨み付けた。
「まぁ、物的証拠を確認できれば早いと思って」
「何を冷静に言っちゃってんのよお前!仮にも花も恥じらう女の子でしょ!朝からお兄様の足の間にぶらさがってるもん見て、何が楽しいのさ!!」
「別に楽しくはないって。ほら、おとなしく見せな」
「うぉぉぉぉい!?たんま!ストップストップ!俺が悪かった。何したか分かんねぇし、心当たりもねぇけど謝るから手を離せっての!真白!」
半尻の情けない格好でひたすら逃げる。
つか、ズボンのゴムが伸びちまってるじゃねぇか!
「あのさ、私だって見たくて見せろって言ってんじゃないよ。ユキが本当に男かどうか確認させてって言ってんでしょうが」
半分呆れたようにため息をついて、それでも真白はズボンから手を離さない。