先輩に一直線。

私は、『女子の先輩』という、小さなウソをついた。
でも、それだけ小さなウソでも、私にとっては結構重いものだった。

「そっか。」
翔太の表情が、急に柔らかくなった。
いつもの優しくて、明るくて、おちゃめな笑顔に戻った。

「よかった・・・」

最後に小さい声でつぶやいた一言は、私には聞こえなかった。


それから私たちは何事もなかったように歩いて行った。
翔太といると、本当に時間がストップしたかのように思える。
翔太の不思議な魅力だ。だから、女子からも男子からも人気があるんだろうな。

私は、どちらかというとあまり目立たない方だから、翔太がうらやましかったりする。

あっという間に時がすぎ、駅についた。
それぞれ別のホームに行き、線路をはさんで相手に届くように大声でちょっと話したりした。

「荻野!」
「ん??なに??」
「今度さ、今度の野球の試合で・・・・」

翔太がそう言いかけた瞬間、私と翔太の間に電車が邪魔をした。
翔太側の線路で、少し停車してから電車は行ってしまった。

向こう側のホームを見ると、翔太の姿はなかった。