アルカディア少女

ガラガラ。部室の扉が引かれる。
薄暗かった部室に外からの光が入り込んできた。


「孝一くん?いるの?」


そして、醜い女の上ずる声も。部室の扉を開けたのは数十分前に孝一の隣を陣取っていた女、斉藤ミキだった。
頬を赤らめ、胸を上下に息をはずませ、まるで彼に今から告白されるとでも図々しく思い込んでいるかのように、いや、実際この女はこれから告白されると思っているのだった。


その証拠に「孝一くん、詩織ちゃんから聞いたんだけど私に言いたいことがあるって言ったそうね。」嬉しそうに上ずる女の声。やっぱり、耳障りだった。
「ああ、そうだ。」掠れる孝一の声。彼は斉藤の目を見ずにそう履き捨てるように言った。


「ホント?何だろうな、楽しみ。」
馬鹿な女、手なんて組合せ嬉しそうに孝一の下へと歩き出す。しかし、女の瞳は孝一に、孝一の視線はカウンターの下へと向けらていた。


「ねぇ、孝一くん。詩織ちゃんと何かあったの?」
少しトーンの低くなった女の声に初めて孝一は斉藤を見た。
「あはは、図星なんでしょう?」
そう言って嘲笑う女の顔はあまりにも醜くすぎて、霞んで見えた。孝一は無意識のうちに眉根を寄せる。


「そうだと思ったのよねぇ、だって詩織ちゃんったら、私に泣きそうな顔で孝一が呼んでたっよて言ったのよ?私ね、これはもうあの子は孝一くんに捨てられちゃったんだって思ったの。だってそうでしょ?幾ら少しばかり顔が良いからって、孝一くんと相応しくなかったもの。」女はそう言い、やっぱり醜く口もと上げ、笑った。


2人の耳に痛みが走る。