「ねぇ、もう一度聞くけどもう、私のことなんて愛してないんでしょう?」
彼女の震える肩と声。頭ではなく、体がかってに動き出す。それは本能に身が動くように、意識的ではなかった。
頭が思考し迷うよりも先に、気がつけば、ああ、俺は彼女をこの腕でしっかりと抱きしめていたのだった。
抱きしめた彼女の華奢な身体の震えが、抱きしめた腕の所為で感じられた。
俺は溜め息を吐く。わざと彼女の首もとに俺の吐き出した溜め息がかかるようにと。それでも、彼女の震えは止まることはなかった。俺は彼女の抱き締める腕の力をほんのもう少しだけ強くしてみる。それでも、やっぱり彼女の震えは止まらない。
「なぁ、詩織。テメェはなんでそんなことわざわざ聞くんだよ?俺がテメェのこと愛してるのなんて、目に見えてわかってんじゃねーかよ。」
俺の言葉に彼女は頷いてはくれない。俺はたまらなくなって、彼女の首筋に顔を埋めた。震えが、ぶつかる唇に直に感じる。俺はそれを止めようと思い、チュウッと音を立てて口づけた。口づけた跡に残るのは、赤く咲いた小さな花。
「わかんないよ、そんなの全然。」
ボソリと小さく呟かれた彼女の言葉。その言葉は2人しかいない部室に、無情にもそれは響いて、そして消えていった。しかしそれでも、その言葉が俺の胸を苦しめるのには十分すぐるほどで、俺は彼女の震える身体を未だ抱きしめながら、小さく呻き声を漏らした。
何故彼女がそんなか細い声でそんなにも悲しいこと言うのだろうか?
俺には点で検討すらつかない。
俺は少しだけ首をかしげて、先ほどは見ることができなかった彼女の顔を、瞳の中を覗きこむ。
「なぁ、詩織・・・お前はなんでそんなこと言う・・・なぁ、なんでそんな顔してるンだよ?」
