蒲公英

あかりは濡れた瞳で大樹を見つめている。

大樹がそっと視線を合わせた。

そして口を開く。

だが…。






そこから言葉が発されることはなかった。

大樹はしかめっ面で乱暴に椅子に座り、仕切直しといわんばかりに一気にバーボンを飲み干した。






「お前…、ヤったんだろ？」






そして言った言葉がそれだ。




「え？」

「だからその男とヤったんだろ！？」

「は！？あんたなに言ってんの！？そんなわけないじゃん！」

「嘘つけ！ヤってもない女にプロポーズなんかするか！」




ふっと僕らの中に笑みが漏れた。

当人たちは必死に言い合っているが、大樹のその言葉は僕らの不安を一瞬で吹き飛ばしてくれるものだった。






だって、やっぱり大樹はあかりのことが好きなのだ。






彼が口にしたのは嫉妬から生まれた怒りで。

その姿は全身であかりに好きだと叫んでいるようにしか見えなかった。