蒲公英

「本当なんだ。大学時代、あいつはずっとお前のことを見てた。沙羅の姿を追う、お前の視線をな」

「なっ…」

「沙羅を見つめる湧己の真っすぐな瞳が好きだったんだよ。だからお前に惚れてたっていうより、その一途な気持ちに惹かれてたんだと思ってた」




未来はそこで一端言葉を切った。

僕の反応を窺っているようだった。




「でも今の湧己に春日があんなふうにくっついてくとさ。やっぱり、お前自身に惚れてたんじゃないか、って思っちまうんだ。もしかしたら今でも…ってさ。

いつか春日が俺の前から消えちゃう気がして。恐くて。

だから急いで結婚したんだ。

一秒でも早く、あいつを俺だけのものにしたかった」




僕はなにも言えずに俯いた。





「…なぁ。春日、本当は湧己と結婚したかったんじゃねぇかな…」






ありえない、としか言いようがなかった。

だって…。






春日は僕と沙羅の終わりに、誰よりも泣いてくれた。