蒲公英

だがちがうのだ。

春日が僕に特別な感情を持っているとか、そういうことは決してない。

彼女が言いたいのは別のことだ。

もっとも、熱くなった未来も勘違いしているのかもしれないけど。

普通に考えればその意味がわかるはずだ。






春日は僕の心の痛いところを突いた。






「…誤解だからな?」




先手必勝。

なにか言われるよりも先に僕は言った。




「わかってるよ」




けど未来は意外にも怒ってはいなかった。

静かにソファに腰をおろすと、組んだ手に額を乗せた。

そしてゆっくりと話しだす。




「昔さぁ」

「え?」






「春日のやつ、お前に惚れてたんだよ」






「…はぁっ?」




僕は素っ頓狂な声をあげた。

かすれて裏返った音が喉につまって思わずむせりそうになる。

突然なにを言いだすかと思いきや…。






そんなことはありえない。






未来は僕の考えを察したのか、寂しそうに笑ってみせた。