「こいつらもう新婚でも新居でもなんでもないって言ったんだけどな」

「うるさいよ」




未来が睨みをきかす。春日は笑っていた。




「結婚して、もう何年だったかしら?」

「忘れたのかよ」

「まさか。ちょっと待ってね。1、2…。5年、かな?」

「はい、当たり」




指折り数える春日。未来に頭をなでられうれしそうだ。

ふたりはいつもこんな感じだった。

倦怠期などという言葉には縁がない。

気分だけだったら充分新婚で通るだろう。

河南子がうらやましそうに言った。




「私、おふたりが理想の夫婦なんです。私と湧己さんもこんなふうになれたらいいなってずっと思ってました」

「お。それは光栄です。な、春日?」

「うん?」



春日はちょうどグラスにワインを注いでいたところで話を聞いていなかったようだ。

小首を傾げてきょとんとしている。

未来が呆れて春日の頭を軽くこづく。

幸せそうな、優しい笑み。

僕が忘れかけてるものを見せつけられた気がした。