だけどきっと彼は知らないのだろう。
この町の若衆に僕以上の酒豪がいたことを。




――酒は飲んでも呑まれるな、ってね。先に潰れるような男は嫌い。




そのたった一言のために、浴びるほどの酒を飲んで必死に今の僕をつくりあげたことを…。

知らないだろうが、少なくとも設楽家の人間にはなにも話すつもりはない。






僕だけの…、いや、僕らだけの大切な記憶として静かに眠らせておくつもりだった。











なのに…。