今は症状はほとんどないらしい。


「拓ちゃんってさ」


「ん?」


近くにあった岩に腰を下ろして、足を海につける。


「トラウマみたいになってるんだと思うんだ。結構小さいころ、拓ちゃんの前で発作起こしてたから」


「そっか。だから、心配性?」


「そうなんだよね~」


そう言って沙希ちゃんは、ゆっくりと海に体を入れた。


「でもまあ、拓ちゃんに心配されるのは私の特権だし」


私も同じように、海に体を入れる。


「ベタベタに甘えさせてくれるし。拓ちゃんしか、好きになれる人いないかも」


「なんか、のろけ?」


「春菜だって、弘樹さんに対して、そんな風に思ってるんでしょ?」


「おっ、思ってないよ~」


日差しとは違う暑さが、顔を襲う。