「ん?どうした?」


「私、自分の足で歩いて行きたいよ」


虚ろな目で俺を見た後、小さくそう呟いた。


「いつまで私は、人を頼らないといけないんだろうね」


何もかける言葉が見つからないでいると、春菜はゆるゆると目を閉じた。


その後聞こえてくるのは言葉じゃなくて、小さな寝息。


「自分の足で、か・・・」


春菜は十分、自分の足で歩いていると思う。


看護師になるって決めて、真っ直ぐその道を歩いてる。


人を頼るって、多分さっき怜香先生が言ったことだ。


就職先を紹介してあげるって。


きっとこれは、春菜にとって許されないことなんだろうな。


甘えてるって、人を頼ってるって。


気が済むまでやらせるべきなんだろうか?


でも春菜の体のことを考えると実際はそうもいかなくて、応援してあげたい気持ちと、無理はして欲しくない気持ちが、俺の中でグルグルと回っていた。