誠に生きた少女


お互いに刀を構えたまま、向かい合う優希と、黒袴の男。
鋭い視線を向ける優希の立ち姿からは、普段の温かい雰囲気はなかった。
ただ、どこか凛とした、惹きつけられる様な美しさがそこにはあった。

「・・・久木さん、ですね。」

男を見据えたまま、優希は話しかけた。

「もう、調べは付いているわけか。」

口元に笑みをたたえ、男が答えた。
その言葉に、優希の澄んだ声が再び響いた。

「貴方に私がずっと付いていた事、ご存知だったんですね。」
「もちろんだ。そのぐらいの注意力がなければ、こんなことは出来ないよ。」

どこか楽しげに話す久木に、優希は表情を歪めた。

「貴方から監視を外したこと、どうやら間違いではなかったみたいです。」
「・・・何を言っているんだ?」
「仲間だったんですね。鈴木さんと。」

一瞬、驚いたような表情を見せた久木は、すぐに笑顔を見せる。

「私に、忍を仕向けたのは、鈴木さんでした。でも、ずっとどこかで引っかかっていたんです。だって、鈴木さんは、それ以外に、何も行動を起こした形跡は見られませんでした。」
「・・・。」

優希の言葉に興味を持ったのか、男は黙って優希の言葉に耳を傾ける。

「鈴木さんは、裏方的役割。子供の遊んでいる場所を探したり、私のような邪魔者を始末したり・・・。そして、貴方が実行犯です。」
「・・・ふっ。」
「証拠がなくて、どうしても現場を押さえたかった。」

優希の声が、少し震えた。

「私の判断は、正しかった。貴方は、こうして動きました。特任務により、一連の事件を闇に葬るため、貴方にはここで死んで頂きます。」
「・・・・・・ふっ。ははっ、はははっ!」

優希の言葉に、男は声を上げて笑い出した。

「新選組に、我らの上司から新組織の組み込みが要請されたと、風の噂に聞いていたが、お前のような女だと分かったときは、正直驚いたよ。」

男の言葉に、優希は顔をしかめた。

「こんな事件が町人に知れ渡ったら、幕府の面子は潰れるだろうな。」
「それを阻止するのが、私達の役目です。」
「・・・お前も、やりたくもない仕事をしていると、いつか俺のようになるぞ。」

低く、呟くような男の言葉に、優希の瞳の奥が揺れた。