土方の指示を受け、その場は解散となった。
優希と永倉は、部屋の方角が同じため廊下をのんびりと歩いていた。
すると、奥から奥村が二人に向かって歩いてきていた。

「あ、夜風さん。」
「奥村君、久しぶりだね。」

数日振りにみた奥村は、ここの生活にも慣れてきたのか、少し生き生きとした顔つきになっていた。

「久しぶりって、一緒の屋敷に住んでんだぞ。」
「だって、最近皆とすれ違いだったから。永倉さんにだって、久しぶりでしょ?」

頬を膨らまして反抗する優希に、永倉が小さくため息をついた。
そんな優希の頬を、奥村が見つめる。

「あ、本当に怪我してますね?」
「え?」
「さっき、平助に会ったんです。そしたら、優希が顔に傷作って帰って来たって騒いでました。」
「・・・もぅ、すぐ話すんだから。」

奥村の言葉に、優希は藤堂のその時の様子が容易に想像できたのか、ため息をつく。

「あの、ちょっと見せてください。」

奥村の言葉に、優希が首をかしげた。

「へ?」
「傷、見せてくれませんか?顔なら、傷が残ったら大変です。」
「奥村、こいつにそれ言っても駄目だぞ。何度注意しても傷作ってくんだからよ。」

永倉の言葉に、苦笑いをこぼしながら、奥村は優希の顔に手を当てた。
傷を負ってから、まだ洗ってもいないのだろう。
細長い傷跡に、血が固まってこびり付いていた。