誠に生きた少女


「残念だけど、刀の腕だけじゃ零の隊長なんか出来ないの。柔術は苦手なんだけど、貴方の苦無を蹴り落とすくらいできる。」

首に当てられた刀に、少し力が加わった時だった。

「優希!」

呼ばれた先に視線を向けると、沖田と原田が走ってきていた。

「総司、左之さん。」
「大丈夫か?」

原田は優希を気遣うと、優希から忍に視線を向ける。

「こいつは?」
「ちょっと、私の隊が特任務で追ってる関係で・・・。」

優希の言葉に、原田は事情を察知して、それ以上のことは聞かなかった。
優希の腕から忍を引き受けると、力で地面に押さえつけた。

「烝は?」
「藤野君のところに行くって。」

先ほど、山崎と別れる前に、優希は仕事を託した。
巡回で出ている隊長を探して、町外れの空き地に来るように伝えて欲しいと。

沖田が優希に、忍をどうするのかと視線で問いかけた。

「屯所に運びたいの。色々聞きたいから。出来れば隊士達にばれないように。」
「分かったよ。原田さん、御願いします。」

頷いた原田が、押さえつけた体を引き上げたときだった。
忍の口から、赤い液体があふれ出した。

「やめて!何て馬鹿なこと!」

優希の声が響いたが、忍は自分の舌を噛み切り、すでに生きてはいなかった。

「どうして・・・。」
「優希・・・。」

その場に小さく座りこんだ優希の傍らに、沖田が駆け寄った。