町の中心部から、ある程度離れた所で優希は足を止めた。
そして、何をするでもなくただ空を見上げた。
「今日の巡回の当番は、確か総司の隊と・・・」
後は、どこだったかな?
と、考えを巡らせていたそのときだった。
――ひゅっ――
風を切る小さな音とともに、自分の頬に小さく衝撃が走った。
優希の白い肌に、うっすらと赤い線が走ったかと思うと、一筋の赤い雫が頬を伝った。
「・・・ねぇ、知ってる?」
その場から、振り向きもしないまま、優希は話し出した。
「飛び道具で止めを刺すのは、その辺の忍じゃ到底無理なんですよ。」
優希の視線の先には、正面の木に突き立った苦無(くない)。
「本気で私を殺したいなら、私の部下くらいには腕を磨いてください。」
そういって、優希は自分の背後を振り向いた。
するとそこには、仁王立ちをした忍が一人、苦無を片手に優希を見据えていた。
「誰の命ですか。」
「・・・。」
「・・・。残念だけど、あなたに私は殺せない。」
優希が刀に手をかけたその時、忍が強く地面を蹴った。
一瞬のうちに優希の背後に回ると、大きく苦無を振り上げる。
が、振り下ろすより一瞬早く、優希はその手を蹴り上げ苦無を弾き飛ばした。
一瞬怯んだが最後、気がつけば忍の喉元には優希の脇差が当てられていた。

