誠に生きた少女


「烝、何かあった?」

背後に立っていた山崎は、優希の声に数歩歩み寄った。

「何かあればいいんやけど、何もないねん。見張りつけてるやつも、何の動きもない。
 それならばと泳がしとるやつも、動く気配がない。こっからが正念場になりそうや。」
「そっか・・・四人の中の一人だと思うんだけど・・・。」

ここ数日、四人に絞った容疑者に優希も含めて一人ずつ付いていた。しかし、気づかれたのか、それ以降犯行は行われなくなった。
そこで、山崎と優希だけ、見張りを外してみたのだが、どうやら動きはないらしい。

「どうしようか。」
「ここは、我慢するしかない気もするけどな。」

山崎の言葉に、優希も頷くしかなかった。

「・・・烝、一個気になることがあるの。」
「なんや?」

山崎に視線でかがむように指示をすると、耳元で優希があることを伝えた。
その内容に、山崎は少し表情を変えたが、すぐにまた元の無表情を作り上げると頷いた。

「・・・わかった。ただ、きぃつけや。」
「零の隊長を甘く見ないで。大丈夫。」

優希の言葉に、山崎はもう一度頷くと、闇の中に消えていった。

「さて・・・。」

小さく息を吐くと、優希は町のはずれへと足を進めていった。