「だから優希は、零の隊長でなくてはいけないんだ。」
沖田の言葉に、奥村は記憶をたどった。
「夜風さんも、似たようなことを言ってました。」
奥村の歓迎会の夜、優希と外で話をしていたときだ。
「そっか。優希は女だから、普通の腕じゃここにはいれない。だから強くなった。
でも強いだけでは、認めてもらえなかった。だから、優希には最高の地位が欲しかったんだ。それは、副長助謹だけでは足りない。一番隊長でも、二番隊長でも駄目なんだ。
新選組最強の、零の隊長じゃなきゃ、彼女の居場所を守れなかったんだ。」
そこまで話して、沖田は口を閉じた。
奥村は、少し遠慮がちに尋ねた。
「夜風さんが、そこまでして、新選組にいたい理由って、何なんですか?」
奥村の問いに、沖田は少し悩んで、静かに言った。
「彼女の居場所は、ここしかないんだ。」
「・・・え?」
「優希が、ここにいることを心から望んでる。だから僕達は、必死にその優希の選んだ道を守ろうとしてる。ただ、それだけだよ。」
何か、きっともっと深い何かが、彼らの中にあるのは事実だった。
でも、今の奥村には、そこに踏み込めるだけの勇気も、信頼もなかった。
いつか、きっと君も知ることができるよ。
沖田の笑顔が、奥村にそういっている気がした。
「さて、帰ろうか。夕餉の準備に奥村君がいないと、僕が怒られちゃう。」
そういって、同い年とは思えないほど可愛らしい笑顔で沖田が席を立った。
奥村は、その後ろを急いで追いかけた。

