「沖田さん、永倉さん、失礼してもよろしいですか?」

奥村の声に、雑談をしていた二人が顔を向けた。

「お、奥村か。かまわねーよ。座れ。」
「奥村君、朝は大変だったみたいだね。」
「あー、まぁ。」

沖田が面白そうに笑うので、奥村もそれにつられて笑った。

「ったく、平助のやつ、逃げるために奥村を使いやがって。」
「まぁ、いいじゃないですか。奥村君は被害者だもんね。」
「朝はすみませんでした。俺にも訳が分からなくて。」

それもそうだと、永倉が呟くと、奥村に酒を薦めた。

「あ、頂きます。」
「そういや総司、こいつ、お前と歳が同じだ。」
「あ、優希にききました。というか、改めて奥村君、一番隊の隊長をしている沖田総司です。よろしく。」

沖田に右手を差し出されたので、奥村もその手を握った。

「あ、ほらやっぱり。見てみて永倉さん、豆があるでしょ。」

沖田が奥村の手をそのまま返し、手を広げさせた。

「ほんとだな。剣術やってたのか。」
「いえ、俺は皆さんみたく、刀は持ったことがありません。剣道です。」

奥村は、自分の時代では剣術は運動の娯楽として楽しまれていると説明した。
もちろん、周りには気を配っていた。

「へぇ、ね、今度僕と手合わせしてよ。」
「む、無茶ですよ。あの沖田総司となんて・・・。」
「じゃあ、俺が相手してやるよ。」
「あ、永倉さんずるい。永倉さんとやるなら、僕とやったほうがまだましですよ。」
「馬鹿、お前は手加減てもんができないだろーが。」

新選組の中では一に永倉、二に沖田、三に斉藤と語られるほどの二人の誘いを、奥村が心から遠慮したいと思ったことは言うまでもない。