「奥村君、手にまめがあった。あれは剣術をやってる人の手だよ。」
「・・・そんなとこ見てたのか?」
「平助君には、観察力が必要ね。」
「え、じゃあ優希も気づいてたの?」

こくりとうなづく優希に藤堂は、がっくり頭を下げた。
でも、思い出したように顔を上げる。

「でも、雅貴は刀持ったことないって話してたけど・・・」
「刀じゃないと思う。刀だともっとごつごつしちゃうから。」
「僕もそうだと思う。たぶん、竹刀どまりじゃあないかな?」

優希と沖田の意見に、藤堂は朝奥村から聞いた話を二人に伝えた。

「刀を持たなくていい時代かぁ。僕たちには考えられないね。」
「平和なんだね。」

なんとなく、三人で黙り込んでしまう。
今頃賄方の仕事を叩き込まれているであろう奥村は、刀を差している自分たちを見て、どう感じたのだろうか。
そんなことを、なんとなく考えていると、優希が口を開いた。

「いつかさ、奥村君も刀を持つ日が来る気がする・・・。」
「・・・まぁ、ここにいたらそうだろうな。」
「・・・辛い、ね。」

優希の言葉に、藤堂と沖田は言葉を返すことが出来なかった。
優希の辛いには、きっと自分たち以上の重さがある。
男である自分たちが刀を持つこととは違い、女である優希が刀を持つことは、きっと平和な時代を生きる奥村が刀を持つことと同じくらい、覚悟が必要なことなのだ。

「さて、今日は優希のおごりでしょ?僕もう一皿食べる。」
「え、総司は自分で払ってよ!」
「僕の部屋にあった団子、優希この前来た時こっそり食べたでしょ?」
「あ・・・何でばれてるの。」
「俺見てたもん。総司いなくて、お前机に置いてあったやつもって帰ったろ?」

藤堂がにやりと笑って答えた。

「平助君、ひどくないですか?」
「黙って食べた優希が悪い。今日は総司の分もおごれって。食べ物の恨みは怖いぞ?」

にこにこ微笑む沖田の横で、しぶしぶ優希は財布を取り出した。