「おばさーん、団子一皿ずつとお茶御願い。」

藤堂の声に、店の奥からはいよと声がする。
ここは優希お気に入りの甘味処。
今日は約束どおり、藤堂への昨日の埋め合わせのために来ていた。

「で、何で総司がいるんだよ。」

優希の隣に、ちゃっかり腰を下ろしている沖田に向かって藤堂が声をかけた。

「平助、抜け駆けしようとしてもだめだよ。」

にこにこと微笑む沖田に、藤堂はちぇっと下を打った。

「抜け駆けって?」
「優希は気にしなくていいの。」

首を傾げた時、おばさんが団子とお茶を持ってきてくれた。
思い思いに手を伸ばし、久しぶりにのんびりした時間を過ごす。

「そおいえば、最近優希忙しくねーの?」
「たしかに。昨日も半日非番だったし、今日も夜まで空いてるんでしょ?」

藤堂と沖田の問いに、口に運びかけた団子を止める。

「あー、割と?ただ、近藤さんが昨日偉い人に会いに行ってたから、また近々何かありそうかな。」
「ふぅん、ま、無理はするなよ。」
「心配してくれるなら、昨日の遅刻くらい多めに見てよ。」
「やだね。大体あれは、奥村と話してて忘れたんだから、優希が悪いっつー話だよ。」
「そお言えば奥村君はどぉなの?僕今日誰かさんのせいであってないけど。」

沖田の笑顔の圧力に、藤堂がびくりと反応する。

「わ、悪かったって。新八さんから逃げる為だったんだからさ。」
「ま、僕も平助の気持ちは分かるから今回はいいにするけど。」

でさ、と沖田が続ける。

「正直、僕は賄方は長く続かないと思うんだけど。」
「・・・何で?」

藤堂の問いに、沖田がにっこり笑った。