「こ、これっ、これ見てください!」

奥村のポケットから出てきたのは、財布と携帯電話だった。
財布を開くと、免許証を取り出す。そこには、平成の文字。
免許証の日付と、携帯電話の画面を二人の前に差し出した。

「平成っていうのは、俺の時代の年号で、俺は2010年から来ました。
 こっちは、携帯電話といって、離れた相手と話をする機械です。」

写真も撮れますと、奥村はレンズを畳に向けたまま、シャッターを切り、その画面を二人に見せた。

「こりゃ驚いたな・・・」
「・・・うん。」

奥村の差し出した画面を覗きながら、二人はしばし固まっていた。

「つーことは、お前が未来からきたって言うのは、これを見る限りだと嘘じゃねぇわけだ。」
「屯所の前で固まっていたのも、自分が知らない場所にいたからだったんだ。」
「はい・・・。」


何とか疑いは晴れたようで、奥村は少し安心した。
だが、安心するのはまだ早い。

「奥村さん、それじゃああなたは、住む場所も、知り合いもここにはいないんですよね?」

そうなのだ。帰る方法が分からない今、それが一番の問題だった。

「・・・そうですね。しかも、どうして来たのかも分からないので、帰るにも帰れないと・・・」

奥村が口を閉ざすと、永倉が変わりに話し出した。

「どっちにしろ、行く場所がねぇんだ。しかも、優希が拾ってきたとなれば、とりあえずここにおいとくしかねぇだろ。」
「拾ってきたって、物みたいに言っちゃ駄目。ね、奥村さん。」
「あ、はい・・・」

何も言えない奥村は、ただ返事をするしかない。

「それに、見た感じ若ぇんだ。優希と同じくらいだろ?いくらでも使い物になる。」
「・・・奥村さん、何歳?」
「21ですけど・・・。」

そらみろ、と言う顔で永倉が優希を見る。

「うわぁ、大人っぽいから、私より上かと思ってたのに。」
「それは、お前が餓鬼なだけだろ?」

永倉の言葉に、優希は笑顔で永倉の頭をたたいた。

「っってぇ!!」
「じゃあ、奥村くんでいいね。私のことは優希でいいから。」

そうやって向けられた優希の笑顔に、奥村はまたはいと返事をするのであった。