人間というものは、結構最低な部類の生き物かもしれない。


朝、目が覚めると昨日のことを気にしながらも、まったく覚えていないとでも言うかの様に普通にお父さんと話した。

本当は…すごく気になるのに、返ってくる反応が怖くて聞けない。



そして……
また屋上に私はいる。



「…今日もいい天気…」



まるでセリフを言うかのように、その言葉にはまったく意味がない。
ただ…言ってみた。



「………?」



今日はいつもより心がここにない。
下を見ても…飛び込めそうな気がする。



カシャッン



柵をよじ登る。
そして、立ってみた。



「…………」



あと一歩…行ける…のかな…


足を外に出した。



「…毎日…そんなつまんない遊びしてんの?」

「?!」

「上だよ。上!入口の…」



屋上の出入口の上の段に人が座ってた。



「……南…蓮人…」

「つまんない遊びしてるんだな…刺激も快感も無い。
…邪魔だったのかな?………それとも…嬉しかった?」

「…私が何しようと関係ない。それから……嬉しくも…邪魔とも思ってない。」

「…じゃ…何を思ってたの?……外を見て…なんかあったりしたの?」

「…わからない。何も感じてない、何も見てない、聞いてない……何も…思ってない。」

「………毎日毎日…ここに来れば外を見て……
何か意味あった?
何も見てないのに、なんで何かを見ようとしてんの?
何も思わないくせに、なんで行動してんの?」

「?…意味…不明…」

「ここに来るっていう行動はどうしてあるんだっつってんだよ!!
何も思わないくせに…動いてんのはなんでなんだよ!!!
結局はなんか感じてるってことだろ??!」

「……感じる…?たしかに…何かを感じてるのかな…
……でも…今、飛び降りることに対しては…本当になんも感じてない…」

「……なら…飛び降りろよ」

「…最初から止めなきゃいいのに……」



どうせ飛び降りさせるんだったら…



そう思って…足を踏み出した………けど…



「きゃっ…」



南がフェンスの隙間から手を出して、私の腕を引っ張った。
フェンスに背中をぶつけた私を、南の腕が抱きしめる。



「…なんのつもり?!」



フェンスと南の腕に挟まれて動けない私はさすがに怒っていた。