「お前…」

拳を振り上げたところで、ふと正気にもどり、絶叫し続ける麻美を取り残し病院へ急ぐ。

「沙耶香!!!」

そこにはすでに沙耶香の家族も集まっていて、家族はみな、ベッドから目を背け泣いている。その奥のベッドに…紗耶香、いや、ついさっきまで紗耶香であっただろう、大きな、固まった血で真っ黒になった肉の塊が横たわっていた。

「さ……」

おれは、声も出なかった。
これがオレの……
『いや、うそだ。うそに違いない。』

けれど時間がたつにつれて、出来事が現実味を増してきた。

そして

「紗耶香!!!!!!!!!!」

気付くと涙が絶え間なくあふれ続け、紗耶香の遺体が霊安室へ移動された後も、ずっとここで膝を落とし泣き崩れていた。