「──白木」
俺の白衣の襟を弄くっている白木に声を掛ける。
真っ直ぐに俺を見上げてくる瞳を見つめ返して、サラサラの前髪にそっと触れた。
「言い忘れていたが、俺だってお前が好きなんだから。そんなに焦らなくていい」
髪を退かすと、白い額が顕わになる。
そこにそっと、唇を押し付けて、ちゅ、と音を立てた。
「ゆっくり、恋をしよう」
みるみる内に、白木の顔が真っ赤になっていく。
俺を突き飛ばすようにして立ち上がった白木は、バタバタと扉へ走っていってしまった。
「おい、白木……」
「……っ、送って、くれるんでしょっ! 荷物、取ってくるから……っ!!」
俺に背を向けたまま、慌ただしい物音を立てながら白木は出て行ってしまう。
──なんだ、素直で可愛いところもあるんじゃないか。
ぽつん、と準備室に残された俺は、倒れたままの椅子を起こして、深く息を吐く。
自分のしてしまったことに、今更ながら、手が震えてきた。
けれど、不思議と気持ちは軽い。
取り敢えず今は、手にした幸せを噛み締めていても良いだろうか。


