「迫田が、『尾藤グループ』から手を引きたがっている。」


 窪田はしぶしぶ話し始めた。


「尾藤のバカ息子を全力で弁護しといて、何抜かしてやがる。」


 驚いた龍一が思わず、迫田のことを口汚く罵り、すぐに窪田の面前であることを思い出し、口をつぐむ。


「すみません。」


 申し訳なさ気に謝る龍一に、窪田は優しく微笑んだ。


「弁護するのが、弁護士の仕事だろ?」


 ごもっともだと、窪田の言葉に納得する龍一。


「それで…だ、」


 窪田が話題を元に戻した。


「尾藤は迫田の娘を誘拐して、迫田を脅迫するつもりだ。あれ程の弁護士はそうはいないからな。どうしても失いたくないんだ。それでも迫田が拒否すれば、親子共々消されるだろうな。」


 詳細まで語る窪田が、龍一は不思議でならなかった。