おしゃべりな百合の花

 やがて、美百合がようやく龍一の方を見て


「お腹空いた?」


 と言って微笑んだ。


 どうやら気持ちが落ち着いたらしいと悟り、龍一はホッとした。


 と同時に、美百合への激しい想いが、龍一の中からどうしようもなく溢れ出した。


「他に聞くことあるだろ?」


 そう言って、ゆっくり美百合に近づき、右手を伸ばした。


「『他に』って何よ?」


 美百合は布団に包まったまま、不思議そうに聞き返す。


「『俺がどうしてここに来たのか』とか…」


 伸ばした右手の指先が、美百合の頬に触れる。


「『俺が、どうして一日中、お前の部屋の前に立っていたのか』とか…」


 美百合の頬が、龍一の右掌に包まれる。


「『俺がどうしてこんなにもお前の傍にいたがるのか』とか…」


 龍一の右手が、美百合の左耳を滑るように通過し、後頭部へ。


 その答えを、龍一は美百合に伝えたかった。