おしゃべりな百合の花

 龍一は今すぐにでも逃げ出したい衝動にかられた。


 『こんなの拷問だ』


 龍一は、普通の恋愛が許される立場ではない、自分の境遇を呪った。


 次なる試練は、観覧車。


 あんたはこれぐらいしか乗れないでしょと、またしても強引に付き合わされた。


 二人きりの空間が苦痛で仕方ない。


 そんな気まずさを紛らわそうと、龍一から口を開いた。


「お前、あの店の社員か?」


「『お前』ってのやめてくれる?」


「お前こそ、『あんた』ってのやめろ。」


 美百合はクスッと笑っただけで、それには反論せず話し始めた。