おしゃべりな百合の花

「おい、待て!」


 慌てて後を追う龍一。


 放っておいてはぐれた方が、都合がいいのではないだろうか。


 正体不明の責任感に囚われていて、そんなことにも気付かないで、美百合を必死で追いかけた。


 が、また突然美百合は立ち止まった。


 龍一が追いついて横に並ぶと、


「これ乗ろう。」


 笑顔全開で美百合が見詰める先には、メリーゴーランド。


 『ああ…ほんと勘弁…』そう思いながらも、美百合に手を引かれて、逆らうことができなかった。


 一頭の馬に二人で跨って、ゆっくり上下しながらクルクル回る。


 姫はご満悦。


 そして、長いストレートの髪が揺れるたび、心地よい香が龍一の臭覚を容赦なく襲った。