おしゃべりな百合の花

「会わせられない。」


 またしても龍一の素っ気無い返事に、美百合はまた膨れた。


「わかってるよ、そのぐらい。」


 少ししょんぼりうつむく美百合に、


「もうこの世にはいない。死んだんだ。」


 呟くように、静かに言った。


 どこか、優しさの込められた口調に、美百合は一層罪悪感に苛まれ、自分の無神経さを反省した。


「気にしなくていい。」


 そんな美百合に、龍一はチラッと目をやると、また前を向いたまま、一言呟いた。


 美百合はそれ以上何も言わず、ただ微笑んだ。


 『全く、この女は、俺がこの世で一番苦手とする部類の女だ。何考えてるかわからないから、扱い方も全くわからない。』


 龍一はそんなことを考え、今日一日、美百合と過ごすことを想うと、憂鬱になった。


 『誰か、この女に取り扱い説明書を付けてくれ。』


 それは、龍一の悲痛な心の叫びだった。