「あゆ、前の方の掃き掃除終わったよ。拭き掃除、お願い」
私は瀬川くんに向かってまだ注意を続けるあゆに話し掛けた。
その途端……
コツン
頭に何か当たった気がした。
その感触に驚いて振り返ると、瀬川くんと倉本くんの驚いた表情が目に入った。
「………?」
そのまま下に目を向けると、さっきまで瀬川くん達がボールとして使っていたプリントの塊。
「あーーーっ!!あんた達!柚の頭にぶつけたね!?もぉ、マジ許せないんだけど!!」
それを見て真っ先に大声を上げたのは、もちろんあゆ。
「わーー!わざとじゃないって!わりい杉田!!許してぇ〜」
「真面目に掃除しよーぜ、拓。拭き掃除終わったら、机運ぶぞ!」
「こらぁー!私が逃がすとでも思ってんの!?」
あゆは慌てて掃除に戻ろうとする瀬川くんと倉本くんを追いかけ回していた。
そんな中、私は瀬川くん達が私にぶつけてきたであろうプリントの塊をそっと拾った。
もちろんあゆみたいに怒ってもいい場面のはずなのに、少し嬉しいと思ってしまった自分がいる。
私はまだまだ、あゆとななっぺとあかねちゃん以外に積極的に話し掛けられるクラスメイトがいない。
瀬川くんも、話し掛けてもらってやっと会話できる状態だし。
だから、こういうアクシデントでも、瀬川くんと関われることが嬉しい。
私…………
どうかしちゃったのかな?
瀬川くんのこと、昨日までとは違う気持ちで見ている。

