引っ込み思案な恋心。-1st






私だけでなく、あゆとななっぺもスタートラインを注視した。





そこには、真剣な顔をした瀬川くんがピョンピョン飛び跳ねながらスタートのコールを待っていた。






「…瀬川じゃん」





ななっぺがそう言うと、あかねちゃんは瀬川くんの方を向いたまま話し始めた。





「瀬川も体育できるでしょー?私、さっきも瀬川の走りを見たんだけどさ、すごいキレーだよ。絶対参考になると思う」



「え…?」





そういえば私、自分の走りに必死で、他人の走りなんて全然見てなかった。





確かに、見本を見れば自分の走りも変わるかもしれない。








まもなく前の人の走りが終わり、瀬川くんの番が回ってきた。





「スタート!!」





武田先生が大きな声で言うのと同時に、瀬川くんは勢いよく走り出した。







一つ目のハードルを軽々しく跳んで、その勢いで二つ目のハードルに走り込む瀬川くん。





そのまま何のためらいもなく、二つ目のハードルを跳んだ。