私だけでなく、あゆとななっぺもスタートラインを注視した。
そこには、真剣な顔をした瀬川くんがピョンピョン飛び跳ねながらスタートのコールを待っていた。
「…瀬川じゃん」
ななっぺがそう言うと、あかねちゃんは瀬川くんの方を向いたまま話し始めた。
「瀬川も体育できるでしょー?私、さっきも瀬川の走りを見たんだけどさ、すごいキレーだよ。絶対参考になると思う」
「え…?」
そういえば私、自分の走りに必死で、他人の走りなんて全然見てなかった。
確かに、見本を見れば自分の走りも変わるかもしれない。
まもなく前の人の走りが終わり、瀬川くんの番が回ってきた。
「スタート!!」
武田先生が大きな声で言うのと同時に、瀬川くんは勢いよく走り出した。
一つ目のハードルを軽々しく跳んで、その勢いで二つ目のハードルに走り込む瀬川くん。
そのまま何のためらいもなく、二つ目のハードルを跳んだ。

