「放課後、俺が忘れ物して教室に戻ったら、杉田がうのっちのワイシャツの袖のボタンを付けてたんだよ」



「………うそだろ?」






私も、うそ…という感じだった。





確かに、そういうことがあった。





けど、私は友達がいないことを宇野先生に心配されて、それを瀬川くんに目撃されたものだと思ってたんだけど……





まさか、そっちの方をみられていたとは。







「杉田、ごめん。言わないって言ったのに。でも俺、あの時すげー女子らしい女子がいたんだなって思ってさ。普通ソーイングセットなんて持ち歩かないだろ?」



「…確かに、私は持ち歩いてない……」





ポツリとあゆがそう言うと、ななっぺとあかねちゃんも「私も…」と続いた。






「ちゃんとセンセーに『ボタンが取れてる』って言う勇気があるってことだろ?だからその時、杉田は話さないんじゃない、話せないんだと確信した」



「………」





倉本くんは、黙ったまま下を向いて、瀬川くんの話を聞いていた。





「それに、あの時マサもいたと思うけど、大雨降った昼休みに杉田が多田と細井に何か言ってたじゃん?あの勇気もマジですげーと思ったし」



「そう。あれがあったからうちらも柚のこと見直したんだよね」





瀬川くんに合いの手を入れるようにあゆがそう言うと、ななっぺも深く頷き返した。






「だから。分かってないのはマサの方。ちゃんと杉田に謝れ」





瀬川くんはそう言って、鋭い視線を倉本くんに向けた。





倉本くんは一瞬私の方を見たけど、すぐに視線をそらした。