驚いて何も言えずに立ち尽くしていると、また二人が顔を見合わせて笑いだした。
「やっぱ面白〜い!何で今まで気付かなかったんだろ?」
「ホントだよねー。瀬川がいじる気持ちも分かるかもー」
え?
まさか、こんな展開になるなんて……。
信じられない。
「ま、杉田さんには選択権ナシだよっ!うちらが友達って決めたから。私は歩美だから『あゆ』って呼んで」
「私は奈々。みんなからは『ななっぺ』って呼ばれてるから、そう呼んでね」
うそーーー!?
私、クラスメイトを下の名前で呼ぶなんて、かなり久しく無かったんだけど……。
「杉田さん、下の名前何だっけ?」
「え、えーっと、柚」
「柚!?かわいー名前!」
「私は普通に『柚』って呼ばれてる……」
「そっか。じゃあうちらも『柚』って呼ぼっか。行こう、柚。昼休みもかなり過ぎたし、話聞けなくなっちゃう」
張り切った表情になった多田さんは、私に手招きしながら廊下を歩き始めた。
細井さんは、突っ立ったままの私の背中を優しく押してくれて、一緒に隣を歩いてくれた。
多田さんがあゆで、細井さんがななっぺ……。
そして、二人が私の友達……!?
私が勇気を出すことによって、こんな短い昼休みの間に状況が急転するなんて。
廊下を歩いて教室に戻る間、私は信じられなくて頭がパニック寸前で、普段ならうるさい雨の音すら全然耳に入ってこなかった。

