引っ込み思案な恋心。-1st











どこに連れて行かれるかと思っていたんだけど、多田さんと細井さんは廊下に出て少し歩いた水道のところで歩みを止めた。





「とりあえず…、何で馬場さんが私達の悪口を言ってたっていう話を知ってるのか、そこから話してもらっていい?」





最初に口を開いた多田さんの表情は、さっきに比べてだいぶ柔らかくなっていた。





だから、割とすんなりと言葉が出てきた。





「うん。昨日、馬場さんと下校したんだ。私達、小学校一緒で、方向も同じだから」



「「うん」」





二人は私の言葉にしっかりと頷いてくれた。





「その時に馬場さんから相談されて…。本当は、悪口を言っていたのは、馬場さんじゃない3人の方だって」



「え…?」





多田さんは私の言葉に驚いて、少し怪訝な顔になった。





「馬場さんは悪口を止めようと思ったんだけど、逆に無視されちゃって、今もそんな3人から離れられなくて苦しんでる」



「うそ……。でも馬場さん、うちらの前で『悪口言わない』って誓ってたよね?」





細井さんもびっくりして多田さんに昨日の出来事を確認した。





「うん。でも確かに馬場さん、苦しそうな顔だったかも……」





多田さんも少し考え込んだ。





私は二人の様子を見ながら、話を続けた。





「それは、3人から無視され続けるのがしんどかったからって言ってた。でも3人の元に戻っても結局無視されてて、余計苦しいみたいで……」





そこまで私が言うと、細井さんがハッと何か思い出したような顔になった。