「瀬川、杉田さんだって用事あるんだよ?引き留めたらダメじゃん」
私が明らかに困った顔をしたのを見逃さなかった細井さんが、瀬川くんにそう言った。
「いやいや、俺と杉田は一緒にリコーダーを練習した仲。嫌がるわけないだろ?な、杉田♪」
…その笑顔、余計に断りにくいんだけど……。
私が黙って突っ立っていると、今度は多田さんが瀬川くんに言い寄ってきた。
「昨日は良くても今日はダメだったりするんだよ。それが女心ってもんよ。覚えときな」
「は?やっぱ女子ってめんどくせー」
「………」
私はそのやり取りを無言で見つめるしかなかったんだけど……
途端に多田さんと細井さんと瀬川くんの顔が私の方に向いてきた。
「………え?」
これは…、私の答えを待ってるってことだよね?
こんな風に大勢から見つめられると、恥ずかしくなってつい下を向いてしまう。
その時、また別の方向からある女子達の笑い声が聞こえてきた。
この声……。
その笑い声のする方に顔を向けると、馬場さんと、馬場さんと仲のいい3人の女子達が見えた。
けど、馬場さんはやっぱり笑ってない。
会話にも入っていけない感じに見えた。
これって、もしかして……
チャンスなの???
私から多田さん達に真実を言えば……
奇跡が起こるかもしれない!!

