「は、はい……」



「いや、ソーイングセット持ち歩いてる女子ってすごいよ。今日は杉田のいいところが知れてよかった」



「はぁ」






こんな嬉しそうな顔をされると、こっちの方が照れてしまう。





「こんなところ、もっとみんなが分かってくれるといいのにな」



「………はい」





どういう顔をしていいか分からなくなって、私は下を向いた。





「じゃあ俺は家庭訪問に出発する時間があるから。また明日な、杉田」



「はい。…さようなら」



「ああ、さようなら。気を付けて帰れよ。杉田ん家、遠いんだから」






笑顔の先生を見ると、やっぱりあの時言って良かったと思った。






ボタンが取れかけていることを言った時は、少し勇気がいったけど……




『付けましょうか?』と言った時は、完全に無我夢中だった。







でもきっと、これで良かったんだよね。






だけど、相手が担任の先生だし。





友達づくりには程遠いけど、誰かに認められただけでも……私、進歩できたよね。







私も少し嬉しい気持ちになって、机を直してカバンを持ち、教室を出ようとした。








その時……。