「……俺、前に言ったよな?好きなヤツがいるって。だから、…細井とは付き合えない」
一瞬、ホッと安心してしまった自分がいた。
友達のななっぺが振られたのに。
…私、何て醜いんだろう……?
瀬川くんにそう言われたにもかかわらず、ななっぺはまだ食い下がれない様子だった。
「好きな人って、誰なの?」
「細井に言わないといけない?」
「好きな人の好きな人なんだから、気にならないわけないよ。教えて……」
「言えない。俺の好きなヤツは、ソイツ本人にしか教えたくない。しいて言うなら、細井じゃねーよ」
「ヒドイよ…」
「俺は正直に言っただけだから。……じゃーな」
そこまで言うと、瀬川くんは私達に背を向けてスタスタと早足で廊下を歩いて行った。
「…瀬川って、女子振る時は淡白だねぇ〜」
一番に声を上げたのは、あかねちゃんだった。
「ねえ、何なの?急にななっぺは瀬川に告るし、一体何がどうなってるんだか……」
一番驚いた顔をしたのはあゆ。
「……くやしい…」
瀬川くんに振られたばかりのななっぺは、その場にしゃがみこんでしまった。
「ななっぺ……、ごめん。盗み聞きするつもりなんてなかったの…」
もう、何を言っても言い訳にしか聞こえない気がした。
けど、何か言わないと、自分自身も苦しかった。

