「おう、みんなお疲れー」





閉会式の準備のためにグラウンドに向かおうとした私達の前に、たった今走り終えたばかりで息も切れ切れの瀬川くんが現れた。





「拓、すごかったなー」



「いや、最後もうちょっとだったけど抜けなかった」



「それでもマジすごかったって!」





倉本くんが一番に瀬川くんに駆け寄ると、瀬川くんも少し安心したような表情になった。





「瀬川、ナイスラン!」



「お疲れだったね、瀬川。柚ー、早く並びに行くよぉー」





私達も瀬川くんに駆け寄ったけど、閉会式の時間も迫っていたのでななっぺもあかねちゃんも瀬川くんに一言声をかけただけだった。





「あ…うん」





あかねちゃんに促されて、私も二人に続く。






けど……、



瀬川くんが気になって、チラッと瀬川くんの顔を見た。






「あ、杉田」



「瀬川くん…」





時間がないのは分かってる。





けど、私も何か言わないと。





だって、私のことは一生懸命応援してくれたのに、私は何もしないなんて、瀬川くんに失礼だよ……。






こんな時に限って、何を言っていいのか分からない。






すると、瀬川くんの方から口を開いた。





「杉田、俺の走り、見てくれたんだな」



「え?うん……」





何で私、こんなに緊張してるんだろう…?





「俺、杉田の声、聞こえた。すげー頑張れたから…」



「……うそ…?」






私の声、聞こえてたの…?





絶対かき消されてると思ってたのに。






「うそじゃねーよ。応援サンキューな!」





瀬川くんはそう言って、倉本くんを追ってまたグラウンドへと走り出した。





私はただただ驚いてしまって、グラウンドへと移動する人々の中で突っ立ってしまい、ななっぺから再び声を掛けられるまで動けずにいた。