「キュ?」

「ってえぇ!?」

ズザササァ…思わぬ姿にカミヤは急ブレーキをかけ地面にうつ伏せとなる。
茂みめがけて飛んだと同時に出て来たのは予想と全く違う小さなキツネ。
それもまだ子供で親から離れてしまったのか他に気配はない。
カミヤを敵だと認識しつつも自分には勝てない相手だと悟っているのか、止まったまま小さく震えていた。

「あ…あー…」

いくら食料を確保したいと言ってもそこまで切羽詰まっている訳ではない。
まして相手はようやく歩けるようになったのかの子狐である。
自分に対して震えながら怯えた視線を向けるソレに対し、バツの悪そうに頭を掻くとカミヤはナイフを収めた。

「いくらなんでもそこまで切羽詰まってないよ、食べないからこっちおいで?」

腰に掛っていたナイフを地面に置くとそれまでとは真逆の、無邪気な笑みを浮かべキツネを見つめる。
後ろは茂みの為、手を伸ばせば簡単に届く距離なのだが決して自分からはそれ以上動こうとはせずジッと待ちながら。
初めは警戒していた子狐も、ずっと待っているカミヤを見て信用したのかゆっくり近づくと腿の上に乗ってそこに座ってしまった

「う…可愛いなおい。」

物欲しそうにも見える目を向けられ悶えつつも、自分に懐いてくれている動物を嬉しく思い、しばらくの間カミヤは子狐の首筋を撫でていた