「そう…なんですか?」
いつの間にか腕を離していたラックもそれは同様に思ったようだ。
自らの記憶を失い、下手したらこの世界の住人ですら無いかもしれないこの男にとって今目の前にいる人がどういう人物なのか未だによくわからない。
しかしこの世界の住人であるラックは何故カミヤがこうまで自然体でいられるのか解らないのだ。
まぁここでそれを問い詰めたとしても答えは返って来ないだろう。
学園長もそれを察しているのか、クスクスと小さく笑うだけで話を広げようとはしなかった。
「さて…カミヤ君、ここからは君も手伝ってもらうよ?」
血の入った注射器を、機械にある差し込み口に押し込むと学園長はカミヤを手招きする。
「何をするんですか?」
「基本情報の入力だ…本来は書類を書いてもらうのだけど面倒だったのでね、直接打ち込んでもらいたい。」

