自分と同じ、寧ろそれよりも黒く美しい髪。
その人…いやあの方はボロボロの俺の前まで近づくと頭に手を乗せ、俺はそのまま気を失った。

眼が覚めて感じたのは柔らかな感触、俺は…ベッドの上にいた。
誰もいない…家具すらない真っ白な部屋。
治療されている身体に気づき、出口を探して扉を開けておぼつかない足取りで細い廊下を歩く。
あの人がしてくれたのか?
ここはどこなんだ?
いやそれよりも……



『お礼を言わないと。』

助けてくれたのが誰なのかはまだわからない、あの人だったのか、それとも別の人だったのか。
でもこれ以上生き物の音がしない場所にいるのは耐えられない。
スラムにいた時も、奴隷生活をしていた時もそこに「命」はあった…
だがここにはそれが無い。

「………ック」

身体が重い、足に力が入らない、なんて事ない距離の扉が…遠い。



「……何をしているんだい?」

「!!!!?」

扉に手を掛けた時、後ろから肩を叩かれた。