Ⅹ-story-クロスストーリー

「………。」

構え…というのだろうかこれは?
両手をだらんと下ろし、呼吸が止まったように静かでまるで生き物の気配を感じない。
蛍が倒れてからもう数分経っている。
流れている血の量と色からして急所は外れたらしい。
といってあまり時間はかけられない。

「…。」

とりあえず相手は自分から向かってくるタイプじゃないようだ。
構えるフリをしてポケットに入っているプレートをランダムにcallする。
どっちが出たとしても異変を感じてすぐかけつけてくれるだろう。
とりあえず最低限の保険をかけて、目の前の相手に集中しはじめた。


まるで職人が刃物を研磨する時のように、意識が徐々に磨がれていく。
街から聞こえるノイズが消えて、聞こえてくるのは『無音音』

キイィー…ン

身体がだんだんと、別の意思を持ったかのように前へ前へと駆り立てる。

「…っガァア!!!!」

咆哮と共に、両の手を開きながら飛び掛かるその姿は人というよりもまるで二足歩行の肉食獣に映る。

「…。」

荒々しいカミヤの攻撃に対して、男の動きは限りなく静かで大人しい。
ユラユラと陽炎のように揺れて、予想していたかのようにカミヤの攻撃を最小限の動きで躱す。