Ⅹ-story-クロスストーリー

「…!!!」

まただ、初めて会ったはずのこいつの声を聞く度身体がざわつく。
寒気がするのに体中熱くて、鼓動が加速していく。

「は…な、せ!!!!」

掴まれた腕を無理やり引きはがす為、相手の肘目掛けて蹴りを入れる。
急所を躊躇なく攻撃するなど、普段なら絶対に行わない行為。
だが後悔は全くない、寧ろ芽生えたのは全く別の感情。

『これじゃ足りない』

耳の奥から聞こえる血液が脈を打つ音。
手足が熱い…向かい合う時間が長くなるにつれてまるで理性が削ぎ落とされるような奇妙な感覚。

「…気持ちイイな。」

意識せず、自然に出た言葉だった。
そしてその一言で男の様子が変わる。

「劣化しても本能は…同じか。」

『これならまだ望みはある』
そう呟くと男はこの時初めて構えをとった。