「お前は…誰だぁあああああああ!!!!!!」

真昼の繁華街に鳴り響いた慟哭。
血に濡れた彼女を背に、敵意を剥き出しにしてカミヤは叫ぶ。
眼前にいるのは自分より少し背の高い男。
漆黒のフードに顔を隠し、手には先ほど彼女を貫いたナイフがしっかりと握られていた。

ポタ…ポタッ

レンガ造りの地面に、彼女の血が零れ落ちる。
その一滴一滴が、カミヤの感情を高ぶらせた。

「……。」

男は口を開こうとせず、その場にいるだけで動こうともしない。
両手をダランとさせ、ただ立っている。
怒りのまま、すぐにでも飛びかかろうと、誰もが予想できる状況で、カミヤは動けないでいた。

この男は『危険』だ。

体が、本能が、魂が大音量で知らせる『警戒信号』

逃げろ、闘うな、それ以上近づくな。
全身が告げる撤退命令を意志で無理矢理撥ね退けるとカミヤは相手へ向かって駆けた。


-ガシ。

この学園で、おそらく随一であろう身体能力。
まさしく獣のように速く鋭い拳撃を、男は無造作に払い、受け止める。