この学園は、およそ学校とは思えないほど広大で。
街と併合しているからあまり外に出る必要もなく。
特待生の自分は配達もしてくれるため引きこもろうと思えば引きこもれるし。
何より自分の周りには騒がしいのが沢山いるからそんなこと考えもしなかった。

表通りへ戻ると目指したのはあの胡散臭い黒猫が取り仕切る雑貨屋。
あまり使われていないプレートを持っているか確かめると、購入したのは二つ。
小さな地球儀と、世界地図。

「データだけなら無料でプレートに入れれるのだよ?」

「じゃ、お願いします。」

家路へと帰りながら、プレートを弄っていると、なるほどこれは分かりやすい。
学園の大まかなマップとこの国の簡易地図が出てきた。




「おかえりー…って何買ってきたの?」

自分の足音を聞きつけて出迎えてくれたのは、緋色の髪を二つに括った男の子。
…最近口調も女っぽくなってきたような。

「んー?地図、俺此処の地理分かんないからさ。」

飄々とした口調でいつもの通りに返す言葉。
…やっぱこいつと話す時が一番落ち着く。

「この辺のことなら僕やラック君に聞けばいいのに。」

「自分で調べても損はないでしょ。」