一週間前、その日も男は一人で買い物をしていた。
部屋にいた従者が自分も行くと騒いでいたが断っての事だった。たまには一人になりたい時もある。
学園には程々に出席していたつもりだが、それでも無欠席という訳ではない。
特待生は出席を取らないらしいが…まぁ事件や怪我を言い訳にするのも今日が最後だろう、明日は丁度週の始めだ。
休日とあって、街は活気にあふれている。
仲間たちと遊びに行く時は大通りを歩いていたが、今日は裏路地を散策してみよう。

2、3本通りを外れれば賑わいを見せる大通りとは対照的に、薄暗い細道が建て並ぶ。
馬車が通れるスペースは無く、土が固まって出来た道を見る限り、区画整備はまだまだ途中なのだろう。

おのぼりさんの様に周りをきょろきょろさせてふらふらしているような場所ではないのだが、この男にはあまり関係ないようだ。
事実露店街らしい場所へたどり着くまでに三回ほどスリに会っている。
無論返り討ちにしていたが。

適当に冷やかしながら店を回っていると、すれ違いざまに気になる会話が聞こえてきた。
自分が通っている学園の外の話。
…そういえば俺はここの外から出たことがない。