昨日と同じ、ぼろ布に包まったままの子が不安げにこっちを見てくる。
…そういえばカミヤが昨日『怯えてる』って言ってたっけ。

「あ…あ……。」

「………。」

僕は調理していた手を止め、近くにあったマグカップにココアを入れる。
独特の、甘くて香ばしい香りが部屋を包んでいった。

「…おいで?」

「ぅ……」

「一緒に飲もうよ♪」

子供の目線まで腰を下ろして、近くにあった棚にマグカップを置く。
ピクっと反応した子供はどうしようか迷っていたみたいだけど、意を決したように僕の所へ飛び込んで来てくれた。

「美味しい?」

「あぅ♪」

「…キミ…名前は?」

聞こうとした時にもう一人起きて来た人がいた。

「オハヨウ…って片付けさせちゃったのか、悪いな。」

「ううん、いいよ全然。」

「…これ朝飯か?火止めとくぞ。」

「あ、ごめん。」
消し忘れてたっけ?
慌てて戻ろうとするとちっちゃな手が僕の袖を掴んだ。

「?」

「ぼくは…アルビノ…なの。」



「…カミヤ、聞いた?」

「あぁ、ハッキリ。」

名前を言ってくれた事が嬉しくて、思わず頭を撫でそうになったけど、昨日の事を思い出して慌てて取り止める。
代わりに抱き上げると気持ちよさそうに眼を細めてくれた。

「ハハ、よかったな懐いてくれて。」

「うん、これで名前で呼べる…でもさカミヤ?」

「何?」

「なんでキミが僕の頭を撫でてるのさ?」

「いや、お前身長低いからつい、さ。」

「…むぅ。」

バタン)カミヤぁああああ!!!アルビノちゃん居なくなったぁああ!!!せっかく名前聞けるぐらいまで懐いたのにぃいぶるば!?」

「五月蠅い……なんで朝から叫ぶの……」

「…皆起きちまったな。」

「アハハ…『オハヨウ。』」