「俺らだな、元々暴走する生徒を抑えるためだったんだが…しがらみが増えちまってなぁ、お前を捕まえようとした憲兵も教職員の派閥だ。」

“ちなみにお前は今のところどこにも入ってないから無所属ってことになる”
そこまで言うとフライヤはカミヤの現状を指摘した。
そしてこれからどうしたいのかをカミヤに問う。

「俺はー…別にそんな面倒な事に巻き込まれたくないなぁ。」

それだけ言うとフライヤはさっきレビィが言った“今のままを通すつもりなら”という言葉が何を意味していたのかを理解した。

この男は何処にも属する気など更々無いのだ。

そしてそれは自分達の所属する組織を含めいつでも敵になる危険性があれば、他の組織に狙われる可能性もあるという事…だが目の前にいるこの男はその危険性を理解しているようには見えない。

「……。」

飄々として、仲間になったレビィをあやしているこの男がいきなり誰かと敵対するという事は無いのだろう。
だが記憶を失っている状態で、仲間一人の為に特待生に真っ向から戦いを挑み、曲がりなりにも引き分け以上の結果を残せる戦力を持ち合わせているのだ。

だからこそ周りはお互いがお互いに警戒し合い、今日何の警戒心も持たずに登校したカミヤが誰にも襲われなかったのである。

「…フゥ。」

目の前にいるフラッと現れた転校生。
こいつがこの腐った学園をどうしたいのか、今の自分に知る術など無い。
だが少なくとも卒業するまでの間、何事もなく過ぎ去る事など考えられなかった。
…もっともこの学園に“何事もない”ということなどあり得ないのだが。