「ハッ……ハァ……っあう!?」
舗装の行き届いてない石畳は濡れると滑る。
弱々しい、ふらついた足取りではまともに前へ進めないことなど誰の目からも明らかだった。
そのまま崩れ落ちるように、水たまりに顔を打ち付ける。
-ベシャリ。
もう何度も転んだのだろう。
泥だらけの服は更に汚れみすぼらしくなった。
「う……うぅ…。」
いつの間にか…いや、いつから流れているのか解らない涙。
頬を伝う水滴は傷口から滲み出る血と混ざって赤色に染まり、水溜りへと落ちて行く。
痛い…寒い…冷たい…苦しい。
それでも前へ進む事を止めようとはしない。
-1000年前。
今となっては童話の世界。
今よりももっと知識の無い世界。
ある女性を襲った悲劇。
そこから生まれた一つの噂。
『化物の子を孕まされた女がいる。』

