「(子供…か?)」

ボロボロの布切れに包まれて、走り去っていこうとする相手にしばし目を奪われる。
心は走りたくとも体は付いて行かないのだろう。
何日も動き続けたのか両足はボロボロに傷つき、汚れている。
台風の様な大粒の雨に打たれ、大量の水を吸った布は重く、その小さな体に張り付いて動きを更に鈍らせていた。









………
……





「ハッ……ハァ…。」

擦り傷、青痣、切り傷…。
ズタズタの両足で雨の中をただ走る。
子供…というよりも幼児に近いような身の丈。
泥だらけの布切れは元々洋服だったのだろう、所々に刺繍が施されているものの殆ど消えて見えない。
服の切れ間から見える髪と肌の色は雪の様に白く、それが全身の傷や汚れを一層痛々しく見せていた。